説明
岩谷堂箪笥の材料
◎木部 岩谷堂箪笥に使われる木材は主に欅(けやき)と桐(きり)です。岩谷堂箪笥の重厚な表層はその美しい木目の欅の突板(天然木化粧合板)で形づくられています。ひき出し内部には桐が使われ、狂いの少ない桐の材質が大切な衣類を永く守り続けます。
◎塗り 漆塗りには拭き漆塗りと木地呂塗りがあり、拭き漆方法は、塗っては拭き、塗っては磨くという工程を何回も繰り返します。箪笥の外側に漆を塗ることにより木目の美しさが映え、外観が美しくなることはもちろん、時を経るにつれて透明感が増し、独特の風合いがかもしだされるのも漆塗りならではの味といえます。
◎金具 岩谷堂箪笥の大きな特徴の1つは金具にあります。この金具には下絵を描いた鉄板あるいは銅板に金槌と鏨(たがね)を使って絵模様を打ち出してつくる手打金具のものと、手打金具をもとにつくった鋳型に鉄を流し込んでつくる南部鉄器金具(鋳物金具)のものと2種類あります。 金具 ※南部鉄器…岩手県盛岡市、奥州市でつくられる鉄器の伝統工芸品。
◎工程 木地づくりは箪笥づくりの「生命」ともいわれ、いまだに一人の職人が一貫した手づくり作業で、あの頑強な岩谷堂箪笥を作り上げていきます。 そこへ丁寧に漆が塗り重ねられ、木目の美しさが強調されます。なめらかな木地の上に金具がはめこまれると、この時から一つの機能美が匠の手を離れ、使い手を待つのです。
岩谷堂箪笥は、18世紀末に岩谷堂(現在の奥州市江刺区)で生まれた岩手を代表する伝統工芸品です。堅牢で優美な飾り金具と重厚な漆塗装が特徴のたいへん美しい和箪笥は、日常に寄り添いながら一生ものとしてお使いいただける芸術品です。